
結婚相談所のスタッフが「仲人」と呼ばれることは珍しくありません。
さらに一部では「先生」と呼ばれる文化もあります。
しかし、この呼称がどこから生まれ、どのように広がったかを正しく知っている人は多くありません。
仲人の舘は全国仲人連合会で東京地区本部長を務めた経験から、この歴史を一次情報と文献に基づき解説します。
この記事は、他のブログで見られる誤解を正し、業界の背景を理解するための記録でもあります。
1. 全国仲人連合会の誕生と役割
全国仲人連合会は昭和45年(1970年)発足、令和4年に諸般の事情で結婚相談所連盟事業を手放しました。
日本で初めて結婚相談所の連盟組織を立ち上げ、全国の仲人が「仕事」として結婚のお世話に携われる環境を創り上げた団体です。
その組織形態は、現在多くの連盟が採用しているフランチャイズ形式や加盟店形式ではなく、ボランタリーチェーン形式。
本部と支部が独立性を保ちつつ、共同で会員紹介やお見合い調整を行う仕組みは、当時としては画期的でした。
2. 名前に「仲人」を入れた理由
参考文献『全国仲人連合会 良縁-その先の人生を見つめて』には、創設期の貴重なエピソードが記されています。
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元校長先生たちを仲間に、持っていた情報をデータ化し、最初は「全国結婚相談所連合会」という名前で立ち上げ、その後「全国仲人連合会」と改名しました。
改名した理由は、そのころ「結婚相談所」の名をかたって詐欺を働いた人が新聞に掲載され、その肩書きが「某結婚相談所所長」となっているのを見て、読んだ人はうちの会と関係あると思うかもしれないという危倶を父が抱いたからです。
でも、「結婚相談所」ではなく「仲人」という言葉を社名に使えば、「某仲人」という表現はしませんから混同されることはありません。
(引用終了)-----------------------------------------------------
このように、「仲人」という言葉には業界の信頼を守るための意図が込められていました。
単に昔の呼び名を踏襲したのではなく、社会的な信用を維持するための戦略的な選択だったのです。
3. なぜ仲人は「先生」と呼ばれたのか
全国仲人連合会発足当初、仲間の多くは元学校長や教員OB、政財界の方々でした。
彼らは地域や職場で日常的に「先生」と呼ばれており、その呼び方が自然に会議や業務連絡の場でも使われるようになりました。
この文化は組織全体に広まり、仲人同士や会員からも「先生」と呼ばれるようになりました。
昭和から平成にかけて、全国仲人連合会の影響力は大きく、この呼称は業界の一部にも波及しました。
4. 呼称変更の通達(平成27年)
時代とともに支部長の職業背景は多様化し、「先生」と呼ばれる職歴を持たない人も増えました。
そこで平成27年、全国仲人連合会は「支部長の呼称変更に関するお知らせ」を各支部長に通達しました。
一部を抜粋します。
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当会では、昭和45年の発足当初より現在まで、支部長に対して「先生」という呼称を使用してまいりました。
この呼称は、当時の支部長の多くが教員退職者であったことに起因しております。
しかし、現在におきまして支部長の多様化が進んでおり、「先生」という呼称の形骸化が危ぶまれております。
当会における支部長のイメージを統一し、顧客への組織的な対応力を高めて行くために呼称の変更が必要であると考えられます。
(引用終了)-----------------------------------------------------
この通達は、呼称の背景と意味を正しく整理し、時代に合わせた組織運営を進めるためのものでした。
5. 筆者が見た「先生」文化の現場
私が全国仲人連合会の東京地区本部長を務めていた時期、全国各地で行われていた定例会では、ほぼ全員がお互いを「先生」と呼び合っていました。
これは単なる敬称ではなく、相手の経験や立場へのリスペクトを表すものでした。
ただし、時代が進み、多様な経歴の支部長が増えた今では、この呼称が必須というわけではなくなっています。
しかし当時の空気感や、人と人をつなぐ仕事への誇りは、今も業界に脈々と受け継がれています。
6. 他ブログで見られる誤解
誤解①「仲人=時代遅れの表現」
→ 実は信頼性と差別化を重視した選択。
誤解②「先生=権威づけのための呼び方」
→ 実際は元教員が多く自然に定着したもの。
誤解③「すべての結婚相談所は同じ仕組み」
→ 全国仲人連合会はフランチャイズではなく、ボランタリーチェーン方式。
誤解④「結婚相談所連盟は最近できたもの」
→ 昭和45年設立、日本最古の連盟。
誤解⑤「仲人と婚活アドバイザーは別物」
→ 呼び名が違うだけで、結婚支援の本質は同じ。
誤解⑥「仲人という言葉は昔から業界全体で使われていた」
→ 実際は全国仲人連合会が広めた独自の呼称。
7. 参考文献とおすすめ書籍
仲人や先生呼びの歴史をさらに知りたい方には、
『全国仲人連合会 良縁-その先の人生を見つめて』
という書籍がおすすめです。
この本には、全国仲人連合会の歩みや理念、創設当初の秘話、仲人としての心構えが詳しく書かれています。
結婚相談所の運営者や仲人、そして現在婚活中の方にとっても、業界の歴史と価値を学べる貴重な資料です。
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まとめ
- 全国仲人連合会は昭和45年に発足し、日本初の結婚相談所連盟を設立。
- 元学校長や政財界の人物が多く参加していたため、「先生」と呼ばれる文化が誕生。
- 名前に「仲人」を使ったのは、結婚相談所名を悪用した詐欺報道による混同を避けるため。
- 平成27年には呼称変更の通達が出され、時代に合わせた組織運営へ移行。
呼称ひとつにも業界の歴史や人々の想いが込められています。
婚活に関わるすべての人に、この背景を知ってほしいと思います。