お見合いの前に男性の緊張をほぐすため、仲人さんが「今日はどんなことを話すつもり?」と訊ねると、「どんなことを話したらいいのでしょうか」と逆に聞かれることがよくあります。
基本的に男性は会話下手な人が多いようです。女性が「趣味は何ですか?」と聞いても「いやあ、仕事が忙しくてほとんど寝ています」と答えてしまっては、そこで会話がぷっつりと途切れてしまいます。仕事が忙しかったとしても、せめて「今は忙しくてなかなか行けませんが、以前は釣りをしていました」といった答えであれば、女性も話の接ぎ穂が見つかります。
案外、皆さん相手から聞いているようで聞いてないのが、家族のことです。掲載しているデータには相手の家族構成はあっても、それぞれの人たちの年齢や職業まではわかりません。相手のことを知るためにも、話の糸口をつかむためにも、家族というのはわかりやすいキーワードです。
そうかと思うと、余計なことまで話してしまって失敗してしまうことが多いのも、また男性です。
ある女性は「長男だからゆくゆくは親もとへ戻ることになると思う」と男性に言われ、交際を断ってしまいました。後で男性に話を聞いてみると、「確かに言ったけれども、それは退職後のことで、二十年以上先の話」ということでした。ご両親も五十歳くらいで、まだまだ元気いっぱいです。二十年後のことなんて、だれにも分からないことで、そのときには状況もずいぶん変わっていることでしょう。そういったことは結婚してから、二人で生活を作っていき、何十年かたったところで出てくる話で、そのときにお互い話し合えばいいことです。
また、「ご両親はお元気ですか?」と聞かれて、たまたまちょっと風邪をひいていて寝込んでいただけなのに、「今、からだをこわしておりまして」と答え、やはり相手から断られてしまった人もいます。あとでお相手の仲人さんにご両親の年齢を間いてみると、まだ四十九歳ということでした。会話がないのも困りますが、誤解を招くようなことをわざわざ言う必要もありません。
こういうことを言うと、ますます気後れしてしまう男性もいるかもしれませんが、一般に女性は相手の何気ない言葉から、最大限の情報を引き出すのに長けています。両親が健康を害したときに世話をしたい、面倒をみたいというのは、息子としてはごく自然な感情で、今そういった状況、あるいは近い将来そうなる可能性があるのであれば、相手にきちんと伝える必要があります。でも、差し迫った問題でなければ、「いずれいっしょになる人とともに考えていきたい」といった答え方をすることも必要です。
また、男性はまじめな人が多いですから、なかには丁寧語を使いすぎて相手を疲れさせる人もいます。
以前、私どものところに六年近く在籍していた男性がいました。顔も整った方ですし、背も高く見栄えも良いので、お見合いの申し込みはたくさんありました。ところが、いつも三回くらい会ったところで、相手の女性からふられてしまいます。そこで、いったいどこに原因があるのか女性に聞いてみたところ、「硬い」「笑わない」「丁寧すぎる」という答えが返ってきました。
彼は几帳面な性格でしたから、週に一度は必ずお相手の女性に電話をするのですが、そのときの電話が、たとえ三回目のデートの電話であっても「○○○○と申します。○○さん、今度の日曜日にお会いしたいと思いますが、ご都合はいかがでしょうか」というものだったそうです。普通は三回めともなれば、もう少しくだけた言い方になるものです。あまりにも丁寧すぎるというのも、いつまでたっても打ち解けない雰囲気になりますし、女性のほうも疲れてしまいます。何度か会ったあとは、相手に呼びかけるときに、名字ではなく、名前を呼ぶというのも親しみを増すきっかけになると思います。
自分が会話が苦手だと思えば、喫茶店にあまり長い時間いないようにするのも良い方法です。天気がよければ「少し歩きませんか」と誘って散歩すれば、喫茶店で顔を付き合わせているよりも、いくらかリラックスして話すことができるかもしれません。また本が好きだったら本屋に、音楽が好きだったらCDショップに誘ってみるのもいいのではないでしょうか。
女性と話をするのが苦手だから、デートのときはいつも映画館に行くという男性もいます。それはそれで良い方法ですが、仲人さんが「じゃあ、そのあとにお茶でも飲んだ?」と聞くと、「いえ、映画館の前で待ち合わせて、映画館でお別れしました」と答えるそうです。まあ、それで交際が順調に進むのであればいいのかもしれませんが、せめてお茶くらい飲んで、映画について話してみれば、相手の性格、物事のとらえ方も分かって楽しいと思うのですが……。
なお、私どもでは、お見合いのときには自家用車は使わないという約束があります。車の中は密室になりますし、交通事故の問題もあります。もちろん、交際に入れば車を使うのはまったく構いません。でも、女性のなかには「運転が乱暴だから、きっと短気にちがいない」とか、「シートベルトをしない人は、約束を守れない人」と決めつけてしまう人もいますから、くれぐれも安全運転を心がけてください。