仲人さんという風習は、その最も古い形式が『古事記』や『日本書紀』のなかにも見られるほど、日本古来からあったものです。けれども、「家」という概念、地域でのつながりが薄くなるにつれ、仲人の労をとろうという人は少なくなってきました。また、一人の仲人さんに寄せられる情報はどうしても限られてきます。結婚は一生のもの。できるだけ広い地域で、できるだけたくさんの情報のなかから、生涯の伴侶を見つけたいというのも人情でしょう。
全国仲人連合会は、まだ「結婚相談所」という言葉が知られていなかった昭和四十五年に、私の父・宮原嘉寿が・政財界の有志の方々のご協力を得て設立しました。その後、三十五年間で全国一千支部・会員総数常時四万人以上となり、これまでに成婚したカップルは実に七万組にものぼります。
この間、ほとんど形式を変えることなくここまで続いたのは、仲人という古き良き風習を残しながら、日本全国の情報を見ることができるというシステムにあります。東京の男性が、九州の女性と結ばれるというのは、その場所に親戚や知り合いがいないかぎり、これまでは絶対にあり得なかったことでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、三十五年の歴史を通してつくづく思うのは、結婚は縁以外の何ものでもないということです。
実は私の友人も、若いときに全国仲人連合会に入会し、お嫁さんを見つけました。彼は口が達者だったこともあって、今の奥さんに決まるまで三回、結婚寸前というところまでいったのですが、特にこれという理由がなかったにもかかわらず、そのご縁は成立しませんでした。縁がない人のときには、電話をかけても相手が不在だったり、うまく連絡がとれないことがたびたびあったそうです。ところが、今の奥さんのときには、意外な場所でばったり出会ったり、親に会わせるときもうまくみんなの休日が重なったりしたそうです。
のっけから宗教じみたことを言いますが、縁とはそういうもので、それに逆らってもうまくいかないものだと思います。縁がないときというのは、ちょうど流れに逆らっていっしょうけんめい泳いでも、ちっとも前に進まないときのようなもので、逆に縁がある人に出会ったときは、加速度的に結婚に向かって進んでいくものです。
もうひとつ、私が結婚は縁だと思う理由は、往々にして会員さんたちが最初におっしゃっていた条件とは違う人を選ぶのを見てきたこともあるでしょう。簡単な例で言うと、「毛深い人は嫌い」と言っていたのに、選んだ人は胸毛まではえていたり、「身長が低い人はだめ」と言っていたのに、選んだ人は自分より低い人だったり。縁としか言いようがない例は、数多くあります。
では、まったく縁がない人はいるのかというと、これは一人もいないと言い切れます。誰でも少なくとも一回は縁があると、これまでの経験を通して自信を持って言えます。ただ、そのチャンスをつかめるか、つかめないかはその人次第で、チャンスをつかむための後押しをするのが、我々仲人なのです。
人生の終盤にさしかかって、ともに歩んできた風景を語り合う相手がいないのは寂しいものです。私の知りあいに、これまで一度も結婚しなかった六十歳近い女性がいるのですが、「寂しい」と言って、犬を相手に話す毎日をおくっています。
また、子どもが欲しいという女性は多いのですが、出産年齢には上限があります。四十歳を過ぎてから焦って相手を探してもなかなかむずかしいですし、たとえ結婚したとしても、すぐに子どもに恵まれるとはかぎりません。
男性は年をとってからでも子どもはいくらでもつくれると言う人もいますが、たとえば四十歳代後半の男性が三十歳代の女性を望んでいても、女性のほうは「おじ さんだから……」と敬遠し、これまた成立しにくいのが現状です。独身の男性のなかには、「結婚した友達からうらやましがられているから、なかなか結婚に踏 み切れない」と言う人もいますが、日本人男性には“照れ”がありますから、「結婚生活はいいよ」とはなかなか言わない。そういう方には、「その友人の言葉 を真に受けてはだめですよ。現にその方たちの結婚生活は続いていて、離婚しているわけではないでしょう」と言うことにしています。
今の人たちは、 昔に比べると若いと言われますが、実際には昔とそう変わっていないと私は思います。ですから、「もっと早い時期に入会されていれば、選択肢も広がっただろ うし、本人の希望にも添えたのに」と思うことも多々あります。全国仲人連合会に足を運ばれる親御さんたちは、お子さんのことを心配していらっしゃる方が多いのですが、お子さんのほうは、親ほど危機感を抱いていないため、乗り気ではないことも往々にしてあります。
けれども、実際に親御さんが入会の手続きをされても※、本人が動かないかぎりはお見合いはできません。お見合いを一度もしないまま、会費だけが毎月むなしく引き落とされていってしまうというわけです。そのため、最近は親御さんに、「入会前にお子さんの承諾を得てお見えになってください」と伝えることが多くなりました。会費だけ落ちていくのは、 我々にとっては努力することなく収入になるわけですから、むしろありがたいことなのです。にもかかわらず、「本人の了承を」と言うのは、入会させることが 目的ではなく、最終的に結婚まで持っていくことが仲人のプライドである、と信じているからです。
※現在ではご本人が契約しないと入会することはできません。
入会から結婚までの手続きは、創立以来、規定料金以外はほとんど変わっていません。コンピュータによってよりシステム化されましたが、ファイル化するという意味では、設立当初から考え方は変わっていません。
よ く父は「変化するものはデータに入れないように」と言っていました。たとえば身長はほとんど変わらないからデータに入れてもいいが、体重は増減があるので コンピュータに入力しない。最終学歴、結婚歴の有無は変化しないので入力するといった具合にです。言い換えれば、変化する条件というのは、本人の努力次第 でいくらでも変えることができるというわけです。
また規定料金に関しても、父が一時弁護士を志していたこともあって、法曹界の明解なシステムを至るところに取り入れています。たとえば弁護士の着手金にあたる入会金、成功謝礼に当たる成婚料などです。
それでは、入会から成婚までの流れを説明しましょう。
*** 入会まで
他の結婚相談所との大きな違いのひとつが、当会では入会前に会員さんのリストをお見せすることです。つまり、自分が望む条件の方が会員さんののなかにいるかどうかを確かめてから、入会するかどうか決められるというわけです。
結婚相談所のなかには、写真リストをパッと見せてすぐに閉じ、入会を迫るというところもあるそうですが、当会ではじっくり見ていただき、そのうえでご希望の相手をコンピュータで検索して、写真付きファイルで確認することができます。そうやって十分に納得していただいたうえで、その方を紹介してもらいたいと なったときに、初めて入会となります。
*** 入会の手続き
入会するには登録が必要となります。登録には下記のものが必要です。
・当会所定の申込書(身上書)に記入する。
・写真二枚。微笑しているものがいいでしょう。できるだけ最近のものを。
※上半身、一人で写っているもの
・戸籍謄(抄)本、または独身を証明できるもの一通
※現在は独身証明書
・住民票一通
・身元保証人
※現在は不要
・金融機関の通帳・届出印(月会費振替のため)
この書類を提出して登録番号が決まると、良縁ニュースに掲載されます。
入会とともに、契約書にも記入していただきます。
※現在ではその他、保険証(写)、収入証明書(写)、短大卒以上の場合は卒業証明書(写)、資格を必要とする職業の場合は資格証明書(写)が必要となります
*** お見合いまで
まず、ご希望のお相手をあげていただきます。だいたい男性で十人、女性で五人くらいが適当です。その後、仲人さんがお相手の仲人さんに電話またはファックス で連絡。お相手がこの申し込みを受けていただけるとなれば、お見合いの運びとなります。このとき、申し込んで受けていただいたすべての方たちと会っていた だくというのが、原則となります。
*** お見合い
遠距離の場合は、原則として申し込んだほ うが出向きます。場所は会員さんの希望を聞いたうえで、仲人さん同士が連絡しあって取り決めます。お見合いは昼間の時間帯で、だいたい二時間程度。仲人さんの自宅で引きあわせて、その後お二人で近くの喫茶店に行くという方々がほとんどですが、なかには仕事の関係上、近くのホテルのティールームなどでお引き合わせすることもあります。最近は携帯電話を持っていらっしゃる方が多いのですが、お見合いは、連絡がつく場所で、というのが原則です。
*** お見合いから交際へ
お見合いが終了した後、担当の仲人さんに交際に進むか、お断りするかを伝えてください。決してお見合いの席で本人にイエスかノーを伝えないこと。お断りするにしても、仲人さんがうまくお相手の仲人さんに伝えてくれます。
交際に進みたいときには、仲人さんが相手の仲人さんに連絡し、先方も同じ意志を持っていれば、そこで初めてお互いの電話番号、連絡先を交換します。
*** 交際から婚約へ
交際に入れば、お互いの連絡は会員さんたちにお任せしています。交際期間中、できるだけ会う回数を重ねることが、婚約までの近道となります。だいたい二週間 に一度くらい、仲人さんに連絡をして近況を伝えてください。それ以外でも、相談したいことがあれば、何でも仲人さんに相談してみてください。会員さんの身になって、豊富な経験からアドバイスすることができる仲人さんがいるということが、当会の特徴なのですから。
*** いよいよ婚約
何回か会ってみて、相手のことを知り、この人ならばと思ったら婚約となります。だいたい三ヶ月を目安にしています。長年この仕事をやってきて、三ヶ月という のは理にかなった期間だと思います。その期間、定期的に交際していれば、たいていの人は決断を下すことができます。会員さんたちは結婚を前提に入会しているわけですから、長引いてしまうと、早く結婚を決めたいと思っている女性に対しては、時がたった分だけ年をとらせてしまいますし、逆に男性に対しては、その間、無駄なお金を使わせてしまうことになりがちです。
仲人さんは、新聞などで募集をかけ、本部で選んでいます。父は「良い人が仲人をやらないと、良い会員さんは集まらない」と常に言っていましたし、その方針は今も変わっていません。
本部では、会員さんが入会されたときの登録料と、仲人さんからの月会費をいただくだけで、それ以外の入会金、成婚料などはいっさいいただいておりません。そ の代わり、宣伝に関してはそれぞれの仲人さんにお任せしていますから、クチコミだけの方、ご自分で宣伝費をかけている方などで会員の数は違い、在籍者がたった一人という方もいらっしゃれば、百人以上会員を抱えていらっしゃる方もいます。
マスコミに登場する仲人さんをはじめ、一般に仲人さんといえば、おせっかい焼きの中年の女性といったイメージですが、実際には男性もたくさんいらっしゃいますし、夫婦でやっている方もいらっしゃいます。女性は自宅で開業している方が多いのですが、男性は外に事務所を構える方が多いですね。女性は家にいてもきちんとお化粧しますが、男性は家のなかでなかなかネクタイ を締めようとは思わない。その違いが、仲人さんの事務所の構え方に出ているのだと思います。
当会では仲人さんを支部長さんとお呼びしています。選ぶときには、前職や、ご主人や奥様のお仕事など、かなり細かいことまで聞いて選んでいます。また、身なりがきちんとしている人、そしてお金がからむ仕事ですから、身の回りがきっちりしていなくてはなりません。若い女性も出入りし、相談するわけですから、独身の男性の方はなるべくお断りしています。男性の場合は、定年退職をされて年金をいただいているなど、ある程度余力のある方。なかには、定年を待たずして、奥様といっしょに営業している方もいます。
それから、仲人さん同土が連絡を取り合うことの多い仕事ですから、仲人仲間としていっしょにやっていける人、そういう点を考慮して選び抜いた人ばかりです。
新聞などに出した広告を見たり、クチコミで評判を聞いた方から連絡があると、仲人さんはまず資料を送ります。そして、相手に届いたところを見計らって連絡を入れ、興味を持っていただけるようでしたら、約束をとりつけてお会いします。
他の結婚相談所のなかには、盛んに勧誘の電話をかけるところもあるそうですが、私どもでは、いっさいそのようなことは行っていません。お会いしたところで説明をし、入会となれば登録の手続きを行います。
お見合いの場では、会員さん同士を紹介する程度で、あとはご本人たちにお任せします。話をするのが苦手という人には、少しだけ傍らについて、話の糸口を見つけてあげることもしていますが、ほとんどはお二人で送りだします。
その後、会員さんの意向を聞き、交際に入りたいという希望でしたら、相手の仲人さんに連絡を入れて「私どもの会員は交際を希望しておりますが、そちらさまはいかがですか」と聞きます。
断ってほしいという要望でしたら、同じように相手の仲人さんに連絡を入れ「ご縁がございませんでした」と伝えます。なぜ断るのかという理由を聞くことはめったにありません。ですが、たまにどうしたら断られないかということを聞いて、会員さんに助言することはあります。不注意な言葉が相手に嫌な思いをさせることに気づかない方もたまにいらっしゃいますから、そういう方にはお伝えするようにしています。
交際中に会員さんが「どうしよう。もっと他にいい人がいるんじゃないかな」と悩んで仲人さんに相談することもありますし、また、結婚を考えている会員さんが、なかなかそれを聞き出せないときに、相手の仲人さんに「うちのほうはそろそろ結婚したいと言っているんですけど、そちらはどうおっしゃっていますか?」と聞くこともあります。
仲人さんという仕事は、一にも二にも信頼が大切です。けっこうホンネで会員さんに話しますから、「この人なら」と思って入会したという方もいらっしゃいます。家が遠いときには、その方の近くの仲人さんを紹介することもありますが、「どうしてもこの仲人さんにお願いしたい」と、遠くから通っていらっしゃる方もいるようです。仲人さんたちの話を聞いていると、なんとかしてこの会員さんを結婚させてあげたいという熱意がひしひしと伝わってきます。
「言いにくいことをズバリと言うので、相手に泣かれてしまい、こっちもいっしょになって涙を流すこともあるけれど、なんとかしてあげたいから言わざるをえない」という仲人さん。結婚が決まると必ず一万円くらいかけて材料を買い込み、手料理でカップルをもてなすという仲人さんもいます。
結婚が決まったとカップルが報告に来て「ここにお願いして良かった」と言ってくださるときが、我々のいちばんうれしいときです。緊張して会っていた最初に比べると、まるで昔からの知りあいのように仲睦まじい様子を見て、ここに入らなければ出会うことがなかったんだなと思うと感慨深いものがあります。また、結婚後も毎年、年賀状を欠かさず送ってくださる元会員さんもいますから、全国に自分の子どもがいるようだとおっしゃる、お子さんがいらっしゃらない仲人さんもいます。
「この仕事をしていると、不思議なことに年をとらない」とよく言われます。仲人さんのなかには、とてもそう見えませんが七十歳、八十歳になっていらっしゃる方もいます。背中がシャキッとしていて、転んで骨折しても若い人より治りが早いくらいで、皆さんとてもお元気です。自分たちより若い人を相手にしていますし、毎日変化があり、そうした変化に常に対応してさまざまな経験を積んでいくわけですから、仲人という仕事は年をとることを生かせる仕事なのだとつくづく思います。
ただ、長年見ていて、仲人さんには良い意味での「好い加減な人」のほうが向いているような気がします。会員さんからさまざまな相談事が舞い込みますし、人の人生の大きな転換点に立ち合うわけですから、あまり几帳面な責任感の強い人ですと、きりきり舞いしてしまって余裕がなくなり、逆に会員さんに窮屈な思いをさせてしまいます。長い間仲人を続けてきた人たちを見ていると、幅のある弾力性を持った「好い加減な人」のほうが長続きしています。
結局、お金が好きという方は、この世界には入って来ないのです。世話好きだとか、おせっかい好きで、お金はあとからついてくるものと考えている方でなくては勤まらない仕事だと思います。
「男女の紹介だから、一歩間違えるとまったく違う方向に行ってしまう。だからこそシステムはきれいにしておかなくてはならない」というのが創立者である父の口癖でした。そのため、基本的な方針には、全国仲人連合会ならではのこだわりが随所に見られます。
*** 戸籍を提出してもらう※。
これは重婚を防ぐためです。過去に一度だけ、自分の弟の戸籍を提出した方がありました。奥さんが当会の名刺を見つけて連絡してくださいましたから事無きを得ましたが、その方がおっしゃるには、妻と別れるため、既成事実を作りたかったとのこと。ちなみにその方の職業は法律家というから、みんなであきれたものです。
※現在は戸籍の代わりに独身証明書を提出していただきます
*** 女性の財産についてはすべて消す。
女性については、どんなお金持ちでも、財産、資産、そして収入はデータに記していません。私どもとは関係がないのですが、二十年以上前、あるテレビ局が財産のある女性を立てて公開お見合いをしたことがありました。女性はそのお見合いで知り合った男性と結婚したのですが、後にその男性は、女性が所有していた不動産を担保に多額の借金をし、そのまま逃げてしまったのです。この場合、すでに結婚してしまったために、法律ではどうすることもできません。その事件を父が知り、「女性の財産は載せない」というきまりに、さらに自信を深めたようです。 ただ、私どもでは仮に女性の財産を公表したとしても、そういう事件は起こりにくいと思います。なぜなら、仲人さんがいますから、事前にそういう目的は見抜かれてしまいますし、女性側の相談に対して助言することもできるからです。
*** 掲載する写真はモノクロで。
私どもでは、登録写真をあえてモノクロで掲載しています。これは、そのほうが実際にお見合いとなって相手に会ったときに好印象を持てるからです。ときには、何十年も前の写真を持っていらっしゃる方もいますが、そういう方も同じ理由で最近の写真を持ってきていただくか、仲人さんによってはその場で撮影するなどしています。 これまで、まゆ毛をボールペンで書いてきた人、禿げているところを「塗ってもいいですか?」とおっしゃる方もいましたが、容貌ばかり気にして小細工しても、決して良縁には結びつかないものです。ただ、眼鏡をはずしたほうが素敵に見える方には、はずして撮影したり、コンタクトレンズをすすめたりすることもあります。最近は、眼鏡もいろいろな種類が出ていますから、変えてみるようアドバイスすることもあります。 もっとも、なかには「眼鏡をかけている人が好み」という人もいますし、その眼鏡がたいへん似合っている人もいますから、その対応は人によってさまざまです。
*** お見合いは申し込んだほうが出向く。
これは住んでいる場所が離れている人同士がお見合いする場合です。たとえば、東京の男性が大阪の女性に申し込んだ場合は、東京の男性が大阪まで出向いてお見合いが行われます。 会を始めた当初は、女性を守るために、女性が申し込んだ場合でも男性が女性のところに出向くことになっていたのですが、そうやって来させておきながら、どんどん断ってしまう女性もいました。それでは男性にも申し訳ないし、今は男女平等の世の中。むしろ女性のほうがしっかりしているくらいですから、男女を問わず、申し込んだほうが出向くということになったのです。 何年か前、衛星で結べば、東京と北海道といった離れた場所でもお見合いができる、といったニュースが流れたことがあります。それを見ていた父は「いや、電車や飛行機に乗るのがいいんだ。距離を感じなくてはだめなんだ。相手の生まれ育った場所を見たり、これだけ遠いんだという実感は、実際に乗り物に乗らなければわいてこない」と言っていたのが印象的でした。たぶん、こうした感覚は、どれだけ時代が進歩しても変わらないと思います。
*** お見合いは明るい時間に。夜は行わない。
休みの日が重ならないなど、よほどのことがないかぎり、お見合いは昼間の明るい時間帯に行います。夜に会うことになると、どうしても食事やお酒ということになってしまいます。お見合いは昼間に二時間程度。初対面ですから好印象のまま余韻を残して終えることができますし、また気の合わない方と長時間過ごすといった無駄も省けます。
*** お見合いではお茶のみ。ぜったいにお酒は出さない。
お酒は、お二人で会うお見合いもそうですが、会員さんだけのお見合いパーティでも出しません。男性のなかには、緊張するとお酒を普段以上に召し上がってしまう人があり、本来の良さが出ないうちにお見合いが終わってしまうことがあるからです。
土曜・日曜が休日ではなく、平日は夜七時まで仕事という女性がいました。申し込んだ男性はサラリーマンでしたから、このままではお見合いができません。仕方なく平日の夜七時半に、例外としてお見合いを行ったのですが、夜ということもあって最初から飲みに行ってしまいました。 緊張した男性は、ついついお酒をたくさん飲んでしまって酔っ払ってしまい、結局女性から断られてしまいました。やはり、夜のお見合いはだめだと、思いを新たにした失敗例です。
*** お見合いは本人同士で。
あくまで結婚は当人同土の気持ちが優先ですから、まずお見合いのときには本人のみで会っていただくようにしています。お互いの気持ちが固まってから、ご両親に会わせても遅くはありません。けれども、たまに相手の顔が見たいという親御さんがいて、そういう方には、「喫茶店の後ろで見ているぶんには構いませんが、あとで相手にそれがわかったら恥ずかしいですよ。もっとお子さんを信頼したらどうですか」と言うようにしています。最近よく言われる母子密着型の母娘というわけです。さすがに男性でそういう方はいらっしゃいませんが。
*** お見合いでは電話番号を交換しない。
最初に会うお見合いの席では、名刺を出したり、電話番号を交換しないようにお願いしています。本人同士の合意で交際に人ることが決まってから初めて、電話番号を交換します。これはストーカーなど万が一のことを考えて、会員さんのプライバシーを守るためです。
私どもの会には、他の結婚相談所でだまされたという方がたくさんいらっしゃいます。ですから、最近では他の相談所から来たという方がいらっしゃると「相談所って怖いですからねえ」と先に言うようにしています。
入会の際にかなり高額のお金をとっておきながら、事務所には来なくていい、お見合いがあればこちらから連絡すると言ったまま、ほとんど音沙汰がないところ。他の結婚相談所の職員のなかには、「社外で会員に出くわしたら、刺されるかもしれないから逃げる」と言っている人もいたと聞いています。また、社員を会員名簿に登録し、お見合い相手としてとして仕込むところもあります。 もちろん、これでは結婚が成立するわけがありません。
最近、脱税で告訴されたある結婚情報会杜の会員名簿が、インターネットに流出するといった事件がありました。ところがその流出した先のデータを、当の会社はなかなか消さない。消さないから見ることができたのですが、ずいぶんときれいな人ばかり掲載してありました。これなどは、会員でもない美しい人を掲載し、宣伝に利用するためにわざと流出させたのだと思います。
私どもの会では、条件などを見てお見合いすることが無理だと思えば、丁寧に入会をお断りすることもあります。結婚することができなければ、会員さんにお金を払わせるだけといった結果になってしまうからです。こういった方々も、商売としてどんどん入会させている結婚相談所はたくさんあります。さらに、若いアドバイザーを雇って、アドバイザーさん目当てに来所させるところもあると聞いております。
全国仲人連合会では、プライバシーに配慮していますから、良縁アルバムを入会前に堂々とお見せすることができますし、なによりお金の流れがはっきりしています。これだけきれいにきちんとやっているところは、他にはないと白信をもって言い切れます。
こうした自負があるからこそ、それが自信につながり、会員さんからの信頼へとつながって、三十五年の歴史ができあがったのだと思います。
お見合いできない方はお断りしていますから、どんな方でも一度は必ずご縁があります。ですから、あとは成婚する力をつけるだけ。たとえば、いい大学を卒業した方でも、マメでなければなかなか結婚にこぎつけることができません。逆に卒業した大学がそんなに良くなくても、マメな方は結婚する率が高いのです。
父はよく「お見合い結婚は、知的な結婚。知的の知は知力という意味ではなく、お互いをよく知っているという意味の結婚なんだ」と言っておりました。仲人さんたちが気が付いたことをアドバイスし、ちょっとした後押しをすることによって、会員さんたちが自分を知り、相手のことを知る。そうして会員さん自身が、結婚する力を高めていくためのお手伝いをするのが、我々の仕事だと思っています。