Aさん、Bさん夫妻 結婚四年目
成婚時、Aさん四十三歳(公務員)、Bさん三十三歳(秘書業務)
Aさん(男性)は四十三歳の公務員です。比較的のんびりとした性格のためか、それまで周囲にすすめられたお見合いも断わっていましたが、そんなAさんも、さすがに四十歳を過ぎたころから、結婚について真剣に考えるようになりました。
そんなとき、以前に雑誌に掲載されて記憶の片隅に残っていた全国仲人連合会を思い出し、ホームページを検索してみました。他の結婚相談所についてもホームページで調べてみたのですが、たくさんのデータのなかから、コンピュータでマッチングする人を見つけるといった手法をとっている結婚相談所に比べ、仲人さんが間に入るという人間らしい昔ながらの方法をとっている当会が気に入って、入会を決めました。上司や知り合いに紹介してもらうのと違って、義理が生じないというのも入会の決め手になったようです。
そのAさんが入会手続きをしていたところを、たまたま別の仲人さんが訪問し、Aさんを見かけました。そしてふと、「うちにいる会員さんと会わせてみては」と思い付いたのです。
仲人さんが思い付いたお相手というのは、Bさんです。当時三十三歳で、秘書の仕事についていました。どちらかというと活発なタイプではなく、コンピュータが趣味で家のなかにいることを好む女性でした。
Bさんは、新聞の広告欄で仲人さんが家の近くで支部を開いているのを知り、入会してきました。他の結婚相談所についても調べてみたのですが、コンピュータを中心とした大手結婚相談所は、外部に情報が漏れるのではといった不安があり、一見小規模に見える当会が気に入ったというのが、入会の動機だったようです。
Bさんには、私どもの会に人会される前、近所の方々の紹介でいくつかお見合いをした経験がありました。けれども、紹介してくださる方もお相手についてあまりご存知ではないことが多く、しかも「断わってもいいのよ」と言ってくださるものの、やはりお断りすると気まずい雰囲気になって、近所づきあいにも気を使うようになります。結婚するなら、知り合いや近所の人ではなく、第三者のほうが気楽だと思っていた矢先に新聞広告を見かけたのでした。
登録されるとすぐに翌週お見合いが決まり、それからは多い日には二~三人かけもちでお見合いをしたこともありました。自分で『良縁ニュース』から選びお見合いを申し込んだり、逆に相手から申し込まれたこともありますが、仲人さんのネットワークのなかから、「この方、いかがですか」と紹介されることも結構多かったようです。Aさんに会う前に合計十人くらいの方とお見合いし、そのうち一人と交際に入りましたが、なんとなく感覚のズレを感じ、断ってしまいました。そんなころ、仲人さんに「今度Aさんに会ってみない?なんとなくあなたと合うような気がするのよ」と言われて、お見合いしてみようと思ったのです。
Aさんにとっては、Bさんが初めてのお見合いの相手でした。結婚すれば長い間いっしょに暮らしていくわけですから、Aさんは「価値観やライフスタイルが一致している人」をここで見つけれられればいいなと思っていたそうです。一方、Bさんは、「自分が自然体でいられるよう、穏やかな人」をお相手の条件にしていました。
実際にお見合いをし話をしていくうえで、二人ともまず、お互いを自分の条件に近い人だなと思ったそうです。双方ともにアウトドア派ではなかったため、交際に入ってからのデート場所は、あらかじめインターネットで調べた美術館や博物館。そして、ともに神社仏閣が好きだったこともあって、いろいろな神杜仏閣巡りをしたそうです。連絡は、二人とも電話があまり得意ではないこともあって、頻繁に電子メールのやりとりをしていました。
週に一度というペースで交際は進んでいましたが、Aさんのすばらしいところは、デートのたびごとに、Bさんに小さな花束を用意していたことです。時には、デートの待ちあわせに遅れても、「少し遅れます」という連絡を入れたうえで花を買ってきていたそうです。そんなAさんに、Bさんは当初、うれしい反面戸惑いも感じていたようです。そこでBさんは、仲人さんにそのことを相談してみました。
花を贈るようなマメなタイプには見えなかったこともあって、仲人さんはそれを聞いてとても驚いたそうです。でも、「そんな人はなかなかいないよ。世の中の女性にこのことを話したら、百%、こんな男性がいいと言うと思うよ。きっと、結婚記念日に毎年花束を贈ってくれる人じゃないかしら」とアドバイスし、Bさんも「そうかもしれない」と素直に喜ぶことにしました。
Bさんは、このように交際の途中で仲人さんに相談できる点が、結婚に至る道のりのなかでいちばんありがたかったと言います。
「相手に対して何か疑問が生じたときに、率直に仲人さんに聞くことができる点が、全仲連の良さだと思います。知り合いだと失礼でとても聞けない質問でも、ここでは“どうお考えですか”と仲人さんに率直な意見を聞くことができるのが、結婚についてあれこれ考えるうえでとても良かったですね」(Bさん)
一方Aさんも、間に入る仲人さんの存在については、交際をすすめるうえで助けになったようです。
「データに偏重していないところがいいと思います。経験豊富な仲人さんが間に入って紹介してくれますし、仲人さんからもよく連絡をとってくださいました」(Aさん)
ある日、いつものようにAさんは花束をデートのときに持ってきたものの、渡すのを忘れてそのまま持って帰ってしまいました。そのことはかえってBさんに「儀式的でなくていいな」と好印象を与えたといいます。義務として持ってきているのではなく、その日のデートをめいっぱい楽しむための演出としてプレゼントしてくれていることが感じられたからです。
これまで「なんとか自分をよく見せたい」という男性が多かったなかで、Aさんはとても誠実に感じられたとBさんは言います。
「質問をすると、いっしょうけんめい考えて答えを出そうという姿勢が感じられる人で、その場でわからなかったことは、その後いろいろと調べてきてまた教えてくれるんです。聞くと必ず答えてくれる辞書のような人ですね。それに話題が豊富で、話をしていてストレスを感じないんです。もともと同年代だと相手が背伸びしているのが見えてしまっていたので、年上の人のほうがいいと思っていましたから、年齢差は気になりませんでした。それにどこかかわいさを感じさせてくれる人だったんです。この人だったら素の自分をそのまま受け入れてくれると思いました」(Bさん)
お見合いからニケ月たったホワイトデーに、AさんはBさんにプロポーズし、二人は結婚しました。Aさんは入会して初めてお見合いした人と、わずかニケ月で、Bさんのほうは入会後四ケ月でゴールインしたことになります。
それから四年がたちますが、毎年仲人さんに年賀状を送ってくださっています。今年は「まだまだ私たちもラブラブです」と書いてあったそうです。
さて、結婚生活について、お二人は次のように話しています。
「結婚前、平和な家庭を思い描いていたのですが、まさにその通りで、とても安らげる場所です」(Aさん)
「毎日発見があって、彼は発掘しがいがあります。結婚後のほうがむしろおもしろいですね」(Bさん)
仲人さんのお宅で、たまたまもう一人の仲人さんがAさんを見て引き合わせたことが彼らの結婚に結びつきました。そしてこのことを「奇跡に近い」と、AさんBさんともに感じているそうです。
Cさん、婚約中 二十九歳(家事手伝い)
Cさんは二十九歳の家事手伝いの女性です。全国仲人連合会にはお母さんのすすめで入会されました。最初、結婚相手は自分で探すと決めていたCさんですが、身近な友達が次々と結婚していくなかで次第に焦りを感じるようになりました。三十歳が目前に迫っているということもあり、「母の希望なら、入会してもいいかな」と、自然に思うようになったと言います。また、入会後、仲人さんからもいろいろとアドバイスされることで、不安は徐々に消えていきました。
Cさんの希望は、仕事をきちんとこなす、やさしい人。一生いっしょに暮らしていく人だから、ちょっとしたことで表情や態度が変わる人ではやっていけない、マイペースな人がいいと思っていたそうです。
人会してすぐに三十七歳の会社員の方を仲人さんから紹介され、お見合いしてみました。でも、このときはまだいちばん最初のお見合いでしたし、まだまだ次があると思っていたということで、この人が結婚相手とはピンと来なかったと言います。
その後、私どもの会が主催するお見合いパーティにも出席してみました。でも、これはCさんには合わなかったようです。
「かなりたくさんの方が来られていたので、短時間で気持ちの切り替えをするのが大変でした。私は一人の方とじっくり話すタイプなので、パーティはちょっと苦手なのです。でも、短時間でたくさんの方と会いたいという人には良いシステムだと思いますよ」(Cさん)
パーティの出席者からお見合いの申し込みが何人かあり、他にも何人かと会ってみたのですが、なんとなくしっくりとはきませんでした。そうやって何人かと会っていくうち、Cさんのなかで存在が大きくなっていったのは、いちばん最初に会った人でした。人の悪口をぜったい言わず、人の気持ちがわかる人だと徐々に思うようになったのです。
「具体的に口で言うのはむずかしいのですが、雰囲気やしぐさ、私に対する態度などを総合して、この人だったら良い家庭を築けるなと思うようになったんです」(Cさん)
そう思うようになった陰には、仲人さんの努力もあったようです。
「女性は結婚となるといろいろと考えてしまいます。でもそんなときに仲人さんに話すことで、自分の心の整理をすることができました。他の結婚相談所は一度紹介したら、紹介しっぱなしと聞いていますが、全仲連では先生(仲人さん)が電話でフォローしてくださったり、気持ちを後押ししてくださいます。私が悩んでいると話を聞いてくださって、ご自分の考えを押しつけることなく、私の気持ちを尊重しながら相談にのってくださり、それがとても心強かったですね。でも先生はいつも、“最後に決断するのはあなたなのよ”とおっしゃっていました」
最初に会った男性の、Cさんに対して常に変わらない態度が安心感につながり、「やっぱりこの人かな」と、Cさんは彼と結婚することを決断しました。入会して四ケ月目、つい最近のことです。
彼女の結婚について心配なさっていたご両親も、「あなたが決めたのならきっと良い人よ」と大喜びで、お相手のお母様などは、「夢ではないかと何度もほっぺたをつねりました」とおっしゃったほどの喜びようです。
最後に今後の結婚生活に向けての夢をCさんに聞いてみました。
「明るく楽しく安定した家庭を築いていきたいですね。彼はいつも変わらずとても安定した人ですから、二人でゆっくりとこれから先についても話し合っていきたいと思っています」
Dさん、成婚時 五十五歳(当会支部長)、ご主人、六十一歳(銀行勤務)
Dさんは、現在五十六歳。実は彼女は当会の仲人さんでもあり、ここでお相手を見つけて再婚された方でもあります。
Dさんは二十一歳のときに恋愛結婚をされ、二人の息子に恵まれました。けれども、ご主人が次第に家庭内で暴力を振るうようになり、息子さんのすすめで四十歳のときに離婚されました。息子さんは高校入学を機に、「もう僕たちは大丈夫だから、お母さん心配しないで離婚して。でも、僕たちまでお母さんに付いていってしまうと、おやじがきっと見つけだしてしまうだろうから、お母さんの後を追わないよう、僕たちがおやじに付いて見守っていくよ」と言ってくれたのだそうです。
それからDさんは、ご自分でご商売をなさったりして生活しておられたのですが、ある日新聞広告をご覧になって応募され、仲人になられました。もともと人と触れ合うのが好きで、人のお世話をするのが大好きな方だったので、仲人には適任という方でした。彼女が五十三歳のときのことです。
このときはご自身が結婚するとはまったく考えておらず、むしろ、結婚はもうこりごりと感じていらっしゃったようです。でも、他の仲人さんから、「自分が幸せでなくては、会員さんを幸せにすることはできませんよ」と言われ、「結婚はまっぴら」といった考えから、「結婚してもいいかな」と考えるようになり、ついにはご自身も登録されることになりました。
現在のご主人は、そんなころにDさんの支部に入会されました。大手銀行に勤めていらっしゃる方で、間もなく定年を迎えるにあたり、残りの人生をともに過ごす伴侶を探していらっしゃったようです。やはり以前に結婚したものの離婚され、成人された子どもさんが二人いらっしゃいました。
最初は一般の会員さんと同じように、いろいろな人をご主人に紹介されていたDさんですが、ある日ご主人から「あなたとお見合いしたい」と言われました。彼はDさんが登録していらっしゃることを知っていたのです。Dさん自身も、ご主人に最初に会ったときに「もしかして、この人と結婚するかもしれない」という漠然とした予感はあったと言います。そこで、いちおう「自分が幸せでなくては」と言ってくださった仲人さんをたて、形ばかりのお見合いをしてひと月で結婚が決まりました。Dさん五十五歳、ご主人が六十一歳のときのことです。
ご主人には三十二歳の息子と二十八歳の娘。Dさんには三十二歳と三十歳の息子がいました。その子どもたちもみんな大喜び。年をとってからの一人暮らしは、もしも病に倒れてしまったときや、お風呂場で転んでそのまま動けなかったらといった不安と常に隣り合わせにあります。そういった懸念は、本人だけでなく、周囲も同じように持っていたようです。
「お父さんが一人でショボンとしているのは耐えられない。気に入った人と結婚したほうがいいよ」「Dさんが来てくださったおかげで、家のなかが一気に華やぎました」と、歓迎してくれ、Dさんの息子さんたちも「おふくろ、良かったねえ」と祝福してくれたそうです。
Dさんに結婚後の感想を聞いてみると、「いいものですね」といった答えが返ってきました。
「誰かがそばにいるというのは、いいものだと思います。きれいな花を見ても、『きれいねえ』と言うと、『そうだねえ』という答えが返ってきます。会員さんたちのお見合い場所を探すときも、主人はコンピュータができますから、『探してあげよう』と調べてくれますし、仕事のうえでもとても助かっているんです。独り暮らしのときは、食生活も“一人だからいいや”という感じで乱れていましたが、今は主人のこともありますから、健康にも気をつけるようになりましたね」
これまで、二人とも自分のリズムで生活してきたわけですから、ご主人との結婚の際には、お互い窮屈な思いをするのはやめようということで合意を得ていました。束縛しない、干渉しないという約束のもと、お二人とも現在はのびのびとした結婚生活を楽しんでいらっしゃるようです。
「恋愛結婚は、運が良ければいいけれど、悪く転べば危険だと思います。いったん好きになってしまえば『この人といっしょにいたい』という思いが先に立って、相手の本質が見えなくなってしまいます。そして結婚して熱が冷めたころに、潮が引くように相手の本質に気づくのです。でもその点、全仲連はプロフィールから入りますから、お相手の方の生活環境がわかります。ですから安心してお付き合いでき、それが恋愛に発展していくのです。離婚率が低いのは、そういう理由があるからだと思いますよ。満たされた条件で結婚するから、トラブルが少ないのです」(Dさん)
Dさんのもとには現在会員さんが十八人いらっしゃいます。一年がかりで誰もが覚えられる良い電話番号を取得され、ご自分の体験を話しながら、会員さんたちの相談にのっていらっしゃいます。でも、なにはともあれ、ご自身がここで良いお相手を見つけ、幸せになっていらっしゃるのですから、これはもうどんな会員さんをも納得させられる大きな強みです。
Dさんのところにいらっしゃる会員さんも、年齢が高い人は結婚が決まるのが早く、若い人ほどなかなか決まらないと言います。
「今は結婚適齢期なんてありませんから、皆さんのんびりしていて、女性は出産適齢期を過ぎるころになってあわてて入会される方が多いようです。ご両親も皇室の愛子さまをテレビや雑誌でご覧になっては、早くあんな孫の顔を見せてほしいとおっしゃる方が多いです。若い人は自分自身を知らない方が多いので、夢を追いがちです。でも、離婚したり年齢を重ねている人たちは自分を知っていますから、出会いを大事になさいます」
会員さんたちには、貴重な出会いから生まれる気持ちの大切さについても、折りを見ながら話しています。
「私は、どんなにピカピカの条件がそろっていても、この人と合うか合わないかは、会った瞬間にわかると思います。側にいて顔も見たくない人とは、いっしょに住みたいとは思わないでしょう。そういった気持ちは相手にも伝わります。自分が嫌だと思えば、相手も嫌だと思うものです。逆にこの人といっしょにいてもいいかなという思いもまた、相手に伝わります。そのときに、ポンと肩を押すのが仲人の仕事だと思うんです。気持ちはぜったいに相手に伝わるというのは、私自身の経験からも自信を持って言えることですね」
※現在「シルバーコース」はありません。
私どもの会には、シルバーコースという熟年者のためのコースがあります。先にあげたDさんは、シルバー会員ではありませんでしたが、単にシルバー希望者でなかったというだけで、家族との関係、パートナーに求めることなど、熟年者の幸せな結婚についてあますことなく体現された良い例だと思います。
シルバーコースは、同居を目的とし、入籍にはこだわらない内縁婚希望者のためのコースです。死別または離婚で伴侶と別れ、後の人生を新たな伴侶とともに暮らしたいけど、遺産や財産の問題で親族や子どもたちともめたくないという人たちのために設けました。茶飲み友達や話相手ではなく、同居して生活をともにする相手を見つけるのが目的です。
もともとこのコースは、遺族年金をもらっている女性を保護する目的で、当会設立当初に父が作りました。ちょうど電車やバスにシルバーシートというものが設置されたころで、それをヒントに「シルバーコース」と名付けたものです。ですから、このコースを希望していらっしゃる会員さんのファイルには、Sというマークがついています。
夫と死別した女性は、再婚するとその年金をもらう権利がなくなってしまいます。でも、再婚した相手と何らかの理由で別れてしまうこともあるでしょう。そうなると、女性は収入の道をまったく絶たれることになります。高齢になってからのそういったリスクは避けたいという女性のために設けたものですが、最近は財産を持っている男性の利益保護といった目的も兼ねるようになりました。
「入籍にはこだわらない」会員さんたちのためのコースですが、実際には入籍するかしないかは、会員さんたち本人におまかせしています。なかには、同居して三年くらいしてから「この人にも何か残してあげたい」と男性が思うようになり、周囲も納得して籍を入れた方もいらっしゃいます。
ある八十一歳の男性が、七十三歳の女性をたいへん気に入り、ぜひうちに来てほしいということになりました。でも、男性が糖尿病を患っていたこともあって、いったん女性はこのご縁を断りました。ところが男性は、「二千万円ある預金も家も全部あなたの名義にするから、ぜひうちに来てほしい」と女性に頼み込んだのです。そして子どもたちには「お前たちはそれぞれ自分の家族を持っていて、それで手いっぱいだと思う。だから、私は自分自身のパートナーを見つけ、残りの人生をともに暮らしていきたい」と自分の気持ちを話し、子どもたちも納得してくれました。結局、その女性は男性の勢いに押されるように籍を入れ、今はたいへん幸せに暮らしています。それまで彼女は生活保護で暮らしていらっしゃったこともあって、我々仲人の間で彼女はちょっとした「シンデレラおばちゃん」として有名になりました。八十一歳の男性も、彼女と生活をともにすることでとてもお元気になられ、子どもたちもそれを見て安心したという話を聞いて「若い人たちだけでなく、人生の終盤にさしかかった人たちの幸せも作ることができるんだなあ」と、この仕事のおもしろさを改めて感じた次第です。
シルバーコースに限らず、年齢を経てきた方が若い人といちばん違うところは、入会と結婚がほとんど同時というくらい、すぐに結婚が決まることです。
以前、私どもの仲人さんになったばかりの方のところへ、六十五歳の男性が第一号の会員さんとして登録され、高齢者の例にもれず、やはり入会してすぐに結婚が決まりました。仲人にとって、結婚が決まったときほど人をお世話する喜びを感じることはありません。彼女は、仲人になったと同時に人をお世話する喜びを知ることになりました。それに勢いを得て、囲碁も会員さんをどんどん増やし、「若い人はむずかしいわね」と言いながら、若い人も年を経た人も次々に結婚させていきます。
五十代以上になれば、相手の方が住んでいらっしゃる家を見に行き、「この家に住むんだったらいいわ」ということでだいたい決まります。旅行だって、食事だって一人より二人でしたほうが楽しいに違いいありません。残りの人生を一人で過ごしたくない。やはり朝起きて、隣の人の顔を見て「ああ、今日も生きている」という実感を得たい。心の安らぎを得られる方であれば、それ以上は求めないといつた方ばかりです。
若い人のように、お相手の身長や学歴を気になさる方はほとんどいらっしゃいませんが、その代わり、思いもかけないことが生涯になったこともありました。
以前、五十四歳の女性会員さんがいらっしゃいました。二十代で結婚と離婚を経験し、以後ずっと独身を通してきた方です。彼女は猫を五匹飼っていました。ところが、この猫が障害となり、何人かとお見合いしてもなかなか決まりません。動物好きな方はたくさんいらっしゃるのですが、一、二匹ならともかく、五匹なるとそれだけで引いてしまいます。二十人くらいとお見合いしては断られ、「もうやめようかしら」と思い始めた頃、ようやく猫もいっしょに同居してもかまわないという男性が現れ、それからはトントン拍子に結婚が決まりました。
独り暮らしの長い人にとって、猫や犬はずっといっしょに暮らしてきた伴侶のようなものです。家族同然というわけですから、その家族も含めて受け入れてくださるような方を探すわけです。シルバーの方が決まるのが早いとはいえ、特殊な条件をお持ちの方は、他の方々より多少時間がかかってしまうのは仕方ないと言えるでしょう。
年齢が高い人がすべてシルバーコースを選ぶかといえば、そんなことはありません。生活が豊かとは言えない女性のなかには、妻になるわけではありませんから、シルバーコースは嫌だという人もいます。シルバーコースを希望する方は、経済的には自立した高齢者の一部の方々と言えるでしょう。
シルバー結婚でいちばん大切なことは、なんといっても子どもの了解をとっておくことです。
五十歳くらいのころに奥様を亡くされ、その後八年くらいしてから会員となられた男性がいました。家の近くにあった仲人さんの看板を見て入会されたそうですが、最初は娘さんに「何を今さら」と大反対されたそうです。けれども、その男性が根気強く説得することで娘さんの心もなごみ、最後には「お父さんが幸せになるんだったらいいよ」と言ってくれました。最近。その男性は気が合う方を見つけて交際に入ったところで、デートのときには着ていく服を娘が見立ててくれると、うれしそうに話してくれました。娘さん自身婚約者がいて、「これで心おきなくお嫁にいける」と言っているそうです。「もしかすると、父・娘のダブル結婚式となるかもしれないね」と、仲人さんと話しているところです。
おもしろいことに、私どもの会では四十代の男性はあまり人気がないのですが、五十代はたいへん人気があるのです。企業に勤めている方も多いのですが、定年までの年数はいくらもありませんから、もう出世欲というのもありません。でもまだお元気な方ばかりですから、いっしょに旅行したり、暮らしを楽しむ相手としては適任なのかもしれません。
結婚したいという人は、それだけで精神的にとても若い人たちです。そうでなくては、結婚しようなどという考えは思いつかないでしょう。私どものシルバーコースの会員さんは、皆さん自分から入会される方ですから、実年齢よりずいぶん若く見えます。お子さんたちも、最初は親御さんの再婚に抵抗があっても、心のどこかでは「誰かと暮らしてくれれば安心」と考えているようで、最終的には了承していただくことが多いですね。
現在のところシルバーコースの方は、年齢が高く財産を持った方ということで、数はまだそう多くないのですが、今後高齢者が増え、再婚する機会が増えることを考えれば、これからますます必要とされるコースではないかと思っています。