相手に好印象を持ってもらうためにも、きちんとした身なりでお見合いにのぞむことは大切です。けれども特に男性は、あまりにも身なりに構わなさすぎる人が多く、第一印象を良くしたいという努カが感じられないのが残念です。でもそれも、仲人さんがアドバイスしていくと、徐々に皆さん変わっていかれ、最初にいらっしゃったときとは見違えるようになる人もいます。
男性には、お見合いではもちろん、登録の際に持ってきていただく写真も、必ずスーツを着用したものにしていただいています。でも、スーツであれば何でもいいというわけではありません。シャツやネクタイの色の組みあわせを考えて、できるだけ品良く明るい印象にしたいものです。たとえば、ワイシャツの色を白から薄いブルーにするだけで、またネクタイの色を明るめにするだけでも、相手に与える印象はずいぶんと違ったものになります。
上はスーツで決めているのに、下は運動靴をはいて来る人。ナイロン製のリュックを背負って来る人もいます。どうしてもリュックにこだわるのなら、背負うのではなく、手に持ったほうが相手に失礼な感じを与えずにすみます。こうしたファッションに関しては、私たちが時々開いているセミナーで、その人に似合う色のコーディネートも行っていますので、参考にしてみてください。
着ていくファッションやバッグが決まったら、何はともあれとにかく清潔にすることを心がけてください。お見合いの後に女性と話をしてみると、「スーツの肩にフケがたくさん落ちていた」とか「爪が長く伸びていて、しかも汚かった」といった感想が聞かれるように、こと「清潔感」について女性はとても敏感です。
髪の毛を清潔にしておくことはもちろんですが、髪形も大事です。以前、顔が大きいのを隠そうと、おかっぱ頭にしてきた人がいましたが、これは逆効果。かえって顔の大きさが強調されてしまいます。また、「清潔」を心がけるあまり、頭をツルツルに剃ってしまう人もいますが、坊主頭から日本人が想像するのは、お坊さんか服役囚ですから、これもあまりおすすめできません。
お見合いは、できるだけ自分の良いところを引き出して相手にアピールする場ですから、こういったところに気を使うのは当たり前なのですが、意外と無頓着な方が多いのには驚かされます。勤めている会社の製品を販売するときには、その製品の良さを、手を変え品を変えてアピールする方法を考えるでしょう。お見合いもある意味では自分をアピールする、いわばプレゼンテーションの場と考えれば分かりやすいのではないでしょうか。アピールの仕方によって、相手が受けるイメージ、印象は大きく違ってくるのです。
これに対して女性は特にアドパイスしなくても、皆さんそれなりにおしゃれに気を使っています。あえて言えば、お見合いの席に着ていく服は、黒などの暗い色よりも淡い色、明るい色のほうが、相手に好印象を与えます。ボトムはきちんとした印象を与えるのであれば、スカートでもパンツでもまったく構わないと思います。
あとは、エレガントに見える工夫です。たとえば、人の家にあがるときには、コートを脱いで手に持ってあいさつしたほうがスマートに見えます。また、喫茶店でコーヒーや紅茶がポットで出てきた場合、まず相手側から注ぐということもマナーの基本と言えるでしょう。
お見合いの前に男性の緊張をほぐすため、仲人さんが「今日はどんなことを話すつもり?」と訊ねると、「どんなことを話したらいいのでしょうか」と逆に聞かれることがよくあります。
基本的に男性は会話下手な人が多いようです。女性が「趣味は何ですか?」と聞いても「いやあ、仕事が忙しくてほとんど寝ています」と答えてしまっては、そこで会話がぷっつりと途切れてしまいます。仕事が忙しかったとしても、せめて「今は忙しくてなかなか行けませんが、以前は釣りをしていました」といった答えであれば、女性も話の接ぎ穂が見つかります。
案外、皆さん相手から聞いているようで聞いてないのが、家族のことです。掲載しているデータには相手の家族構成はあっても、それぞれの人たちの年齢や職業まではわかりません。相手のことを知るためにも、話の糸口をつかむためにも、家族というのはわかりやすいキーワードです。
そうかと思うと、余計なことまで話してしまって失敗してしまうことが多いのも、また男性です。
ある女性は「長男だからゆくゆくは親もとへ戻ることになると思う」と男性に言われ、交際を断ってしまいました。後で男性に話を聞いてみると、「確かに言ったけれども、それは退職後のことで、二十年以上先の話」ということでした。ご両親も五十歳くらいで、まだまだ元気いっぱいです。二十年後のことなんて、だれにも分からないことで、そのときには状況もずいぶん変わっていることでしょう。そういったことは結婚してから、二人で生活を作っていき、何十年かたったところで出てくる話で、そのときにお互い話し合えばいいことです。
また、「ご両親はお元気ですか?」と聞かれて、たまたまちょっと風邪をひいていて寝込んでいただけなのに、「今、からだをこわしておりまして」と答え、やはり相手から断られてしまった人もいます。あとでお相手の仲人さんにご両親の年齢を間いてみると、まだ四十九歳ということでした。会話がないのも困りますが、誤解を招くようなことをわざわざ言う必要もありません。
こういうことを言うと、ますます気後れしてしまう男性もいるかもしれませんが、一般に女性は相手の何気ない言葉から、最大限の情報を引き出すのに長けています。両親が健康を害したときに世話をしたい、面倒をみたいというのは、息子としてはごく自然な感情で、今そういった状況、あるいは近い将来そうなる可能性があるのであれば、相手にきちんと伝える必要があります。でも、差し迫った問題でなければ、「いずれいっしょになる人とともに考えていきたい」といった答え方をすることも必要です。
また、男性はまじめな人が多いですから、なかには丁寧語を使いすぎて相手を疲れさせる人もいます。
以前、私どものところに六年近く在籍していた男性がいました。顔も整った方ですし、背も高く見栄えも良いので、お見合いの申し込みはたくさんありました。ところが、いつも三回くらい会ったところで、相手の女性からふられてしまいます。そこで、いったいどこに原因があるのか女性に聞いてみたところ、「硬い」「笑わない」「丁寧すぎる」という答えが返ってきました。
彼は几帳面な性格でしたから、週に一度は必ずお相手の女性に電話をするのですが、そのときの電話が、たとえ三回目のデートの電話であっても「○○○○と申します。○○さん、今度の日曜日にお会いしたいと思いますが、ご都合はいかがでしょうか」というものだったそうです。普通は三回めともなれば、もう少しくだけた言い方になるものです。あまりにも丁寧すぎるというのも、いつまでたっても打ち解けない雰囲気になりますし、女性のほうも疲れてしまいます。何度か会ったあとは、相手に呼びかけるときに、名字ではなく、名前を呼ぶというのも親しみを増すきっかけになると思います。
自分が会話が苦手だと思えば、喫茶店にあまり長い時間いないようにするのも良い方法です。天気がよければ「少し歩きませんか」と誘って散歩すれば、喫茶店で顔を付き合わせているよりも、いくらかリラックスして話すことができるかもしれません。また本が好きだったら本屋に、音楽が好きだったらCDショップに誘ってみるのもいいのではないでしょうか。
女性と話をするのが苦手だから、デートのときはいつも映画館に行くという男性もいます。それはそれで良い方法ですが、仲人さんが「じゃあ、そのあとにお茶でも飲んだ?」と聞くと、「いえ、映画館の前で待ち合わせて、映画館でお別れしました」と答えるそうです。まあ、それで交際が順調に進むのであればいいのかもしれませんが、せめてお茶くらい飲んで、映画について話してみれば、相手の性格、物事のとらえ方も分かって楽しいと思うのですが……。
なお、私どもでは、お見合いのときには自家用車は使わないという約束があります。車の中は密室になりますし、交通事故の問題もあります。もちろん、交際に入れば車を使うのはまったく構いません。でも、女性のなかには「運転が乱暴だから、きっと短気にちがいない」とか、「シートベルトをしない人は、約束を守れない人」と決めつけてしまう人もいますから、くれぐれも安全運転を心がけてください。
お見合いを申し込む場合、だいたい女性は一度に五~六人、男性は十人くらいを選んでいただきます。人気がある男性の場合、十人申し込むと四人くらいの女性が受けてくださるということもありますが、普通はだいたいお返事をいただけるのは、せいぜい一人くらいです。
お見合いの申し込みが成立すると、本人たちの希望を聞いて、三日くらい候補日をあげてもらい、相手の方にそのうちの一日を選んでいただきます。
仲人さんの自宅や事務所ではなく、外で待ち合わせてお見合いするときには、仲人さんが立ち合うこともありますが、今はむしろ自然な出会いを演出したほうが喜ばれるということもあって、目印を決めてもらい、本人だけで会っていただくことのほうが多いようです。
さて、そのお見合いのときにくれぐれもお願いしたいのは、お断わりしたいと思ったときに、本人の前でそれを口に出さないということです。本人に直接言えば、「どうしてですか」と必ず聞かれます。そうすると、相手にとってのマイナス点をあげざるを得なくなって相手を傷つけてしまいます。せっかく仲人さんがいるのですから、必ず仲人さんに伝えてください。
交際に入ってしばらくたってからお断わりしたいと思った場合、相手に断わらせるようにうまくもっていく人も、たまにいます。
あるとき、女性会員さんから電話があり、一時間近くグチを聞かされたことがあります。なんでも、交際に入って二度目に食事に行ったところ、その男性が「結婚したら、寝室は別にしたい」と言ってきたそうです。男性は二度目の結婚でしたから、彼女は「前の奥さんともそうだったの?」と聞きました。彼は、「以前それで矢敗しているから、今回は別にしたいのだ」と答えたと言います。それを聞いた途端、私は「あ、この男性は女性に断わらせるつもりだな」とピンときました。結果はまさにその通りになり、女性は彼との結婚をあきらめ、男性からは翌日、「たぶん彼女から断わってくると思います」といった旨のファックスが送られてきました。女性がかなりこの交際に積極的だったこともあって、この男性は、女性をなるべく傷つけないようにするために、わざとそう言ったのだと思います。でも、そこまで気を使わなくても、お断わりしたいと思ったときには、仲人さんにそう伝えるだけで、仲人さんのほうからじょうずに断わってくれます。
職業で言えば、やはり男性のお医者さんは人気がありますね。お医者さんから申し込まれた場合、女性は一度くらいは会ってみてもいいかもと思うようです。
他の結婚相談所では、男性医師ばかりを集めたパーティなどで、女性から高額の参加費をとっているところもあるそうです。
以前、そういったパーティに参加したという会員さんから聞いた話です。彼女は私どもの会に入会していたものの、他の結婚相談所が主催するパーティにも頻繁に出入りしていました。あるとき、医者ばかりを集めたパーティに初めて三万円という金額を払って参加し、出会った人とお付き合いしてみたそうです。ところがその後、その方は国家試験を経て資格をとった医者ではなく、接骨師だったことが判明したそうです。きっと肩書きにこだわるばからしさを感じたのでしょう。それをきっかけにその方は、あちこちのパーティに出席することはやめ、私どものお見合いに本腰を入れるようになり、間もなく伴侶を見つけて退会されました。
お見合いがうまくいくと、二回目以降は電話番号を交換し、あとは本人同士で連絡していただいていますが、実はここからなかなかスムースにいかないことが多いのです。
デートの日取りを決めるため、男性が女性に電話をかけて「この日はどうですか?」と聞いたとします。ところが「その日は用事が入っています」と答えられると、それ以上男性は粘らないことが多いのです。用事といっても、もしかしたら午前中で片がつくものかもしれません。「では、夜はいかがですか?」という聞き方をすれば、もしかしたら先方は都合がつくかもしれないのに、「わかりました、また電話をします」と言って、電話を切ってしまいます。それが二度も三度も続けば、男性の方も電話をかける気力が失せてしまって連絡をとらなくなり、そのまま縁がなくなってしまうということは、意外に多いのです。
また、何度電話をかけても連絡がつかないから、結局そのままうやむやになってしまったということもよくあります。
お見合いから交際に入ったカップルがいたのですが、二週間以上たっても仲人さんのもとには特に連絡がなかったため、仲人さんはそのカップルがうまくいっているものだと思っていました。ところがある日、女性から「もう電話がかかってこないからいいです」という連絡が仲人さんのところに入ったのです。男性からは「しょっちゅう電話を入れているけれど、なかなか連絡がつかない」とだけ聞いていたので、「男性は電話をかけているそうよ。知らないの?」と言うと、「知らない」と言います。そこで男性に確かめてみると、「夜九時、九時半と相手に電話をして留守だった、でも十時になると遅いかもしれないと思い、遠慮していた」と言うのです。しかも、留守番電話にメッセージを吹き込むことなく、電話を切ってしまっていたのです。携帯電話ではないので、相手の電話には番号も残りません。これではせっかく連絡をとったとしても、まったくしていないのと同じようなものです。メッセージを吹き込めば、女性もさすがに悪いなと思って男性に連絡することでしょう。
では、連絡がないと仲人さんに言う前に、女性側から連絡すればいいではないかとあなたは思うかもしれません。ところが、これはどれだけ年齢を重ねた女性でも嫌がるのです。
以前、五十歳くらいの女性会員さんがいらっしゃいました。お見合いのあと交際に入り、その後二度会ったそうです。女性は結婚を決めてもいいかなと思いはじめているようですが、男性の趣味が「釣り」なので、休みの日は外出しがちでなかなか連絡がつきません。そこで仲人さんがその女性に、「あなたから電話すればいいじゃない」とアドバイスしたそうですが、「私が?」と、驚いたような返事が返ってきました。「男性に連絡するのが恥ずかしいの?」と聞くと「でも、プライドが……」という返事。「あなたから電話すれば、向こうは喜んで、釣りも一度くらいは休んでくれるわよ。先方も“あなたに電話してもいつもいない”とおっしゃってるらしいわよ」と言うと、「わかりました。ちょっとプライドを下げてみます」ということで、結局彼女から連絡してうまくいったそうです。
「電話は男性からかけるもの」といった概念は、男女平等の世の中になったとは言え、まだまだ根強いものがあるようです。
「どんな人と結婚したいの?」と会員さんに聞くと「フィーリングが合う人」という答えが返ってくることが多いのですが、そのためにはもっと頻繁に連絡して会ってみなければ、どんな人かわからないでしょう。仲人さんのほうも、電話してもよい時間帯を女性に訊ねてから、それを男性に伝えてもらっています。ですから、男性は連絡がなかなかつかなくてもあきらめず、根気よく連絡してみてください。
また、これは最近の傾向ですが、交際に入って三週間たっても、会わずに電話やメールのやり取りだけで「付きあっている」と言う人もいます。「それでいいんですか?」と聞いても「お互い疲れているからそれでいい」という返事。「ではそのままの状態で、もしプロポーズされたら受けるのか」と聞くと「それはちょっと……」となってしまいます。
最近は皆さんの生活が忙しいこともあるのだと思いますが、仲人さんがかなり後押ししなくては、交際が進展しないという人が増えています。それだけ仲人さんが活躍する機会が多くなってきているということなのでしょう。
全国仲人連合会は日本中に支部がありますが、地域差というのは特にないと思います。
父が連合会を立ち上げた当初は、「京都は封建的で外部の人間をなかなか受け入れないから、京都での営業は無理だ」と言われ、へそ曲がりだった父は「それだったら、やってやる」、ということで京都にも支部を作りました。「同じ日本に住んでいるのであれば大丈夫。カルチャーギャッブなんかない」というのが父の持論だったのです。そして、父が言ったとおり、支部は全国に広がり、日本中どこもまったく同じシステムのもとで運営されています。
システムは全国一律ですが、会員さんの地域性というのは、多少なりともあるような気がします。関西から関東に移ってきた仲人さんの話を聞いてみると、引っ込み思案の男性は東京に多く、関西の男性はもう少しラフな感じで、連絡がつかなければ何回も電話をかけるといったしぶとさがあると言います。また、入会するときも、東京は仲人さんのちょっとした後押しが必要だったりしますが、大阪の場合は、成婚が決まった近所の人がクチコミで入会する会員さんも多かったそうです。確かに、近所にはこういったプライバシーは話さないという東京では、あまり例のない話です。
関西に昔、「学歴も良くないし、顔も良くない」とお父様が自慢(?)なさるほど、一般的に条件が良いとは言えない方がいらっしゃいました。でも、彼は交際に入ると週に一度と言わず、二度でも三度でも彼女に頻繁に連絡し、ついに結婚にこぎつけました。相手が不在でもめげずに何度でも連絡し、話し始めると相手の気をそらさない話術に長けていたことも成婚に結びついたようです。一般的にいえば、関西の方のほうが口達者な男性が多いと言えるかもしれません。
こうした地域における特徴は多少はあるものの、大きな違いは特にありません。だからこそ、地域を乗り越え、遠距離で決まっていく結婚がたくさんあるのだと思います。
よく私は仲人さんたちに、「仲人は会員さんが結婚するまでかかる医者のようなもの」と話しています。治療が必要な人には、その人に悪いところをはっきりと伝え、私どもの会にいらっしゃる間にそこを直してもらうのです。
男性に求める条件のなかに「自立している男性」を挙げる女性もいます。その「自立」の内容をよく聞いてみると、単純に「実家を出て一人で住んでいる人」だったりします。でも、東京のように家賃が高い場所では、経済的な事情で、便宜上親と同居している人はたくさんいますから、これはあまり目安にはならないと思います。
でもたまに、親の方が子離れしていないなと思う場面にも遭遇します。
たとえば、お見合いの場に、母親が付いてくるような場合です。でもそういうときには、仲人さんは「せっかくいい息子さんなのに、お母様が横に付いてくることで、点数が落ちてしまいますね」とはっきり言います。もちろん母親の顔色は変わりますが、そういう憎まれ役を買って出るのも、仲人さんの仕事です。
また、息子さんに対して過干渉だと思われるお母様もいらっしゃいますが、そういう方も、私たちの会にいらっしゃる間に、自然と自立していかれます。
先日、ある仲人さんのところに新しく入会された息子さんに、お母様が付き添っていらしたことがありました。息子さんに条件に合うお相手を検索してもらい、仲人さんが頃合いを見計らって「終わった?」と聞くと、すかさずお母様が「ちゃんと選んだの?」と聞きます。そういうときには「お母さん、申し訳ないですけど、息子さんを子どものままにしていませんか。それでは息子さんはかわいそうですよ」とはっきり言います。何回かそういうやり取りが続くと、母親も気づいて、だんだん息子のことに口を出さないようになっていくのです。以前は、息子さんがまだ帰宅していないときに仲人さんが電話を入れると、お母様が「何のご用ですか」と聞いていたそうですが、「お母さんではなく息子さんにお伝えしたいので、本人に電話させてください」と言うと、そのうちお母様も息子さんがいないときは「まだ帰っておりませんので、電話するよう伝えておきます」と言うようになりました。
ここまで母親が過干渉という例はめったにありませんが、私は基本的には、男はみんなマザーコンプレックスを持っていると思います。確かにそれが行き過ぎてしまっては問題ですが、自分をかえりみても、そして息子と私の妻の関係を見ても、多かれ少なかれ男はそういう部分を持っているようです。
けれども、女性はマザコンという言葉に敏感で、「会話のなかに"母"という言葉が○回出てきた」といちいち数えている人もいるほどです。でも男性のなかには「自分の家のことを知ってもらいたい」という純粋な思いからいっしょうけんめい話す人もいることを、女性は頭の隅に入れておいてほしいと思います。
女性が陥りがちな失敗のひとつに、初対面の場であるお見合いで、相手のすべてを知りたいとばかり、質問しすぎてしまうということがあります。まるで面接官のように質問してしまい、自分も採点される側だということに気づいていないのです。
たとえば、「親の面倒を将来みようと思っていますか?」と初対面から聞いてしまう女性がいます。同居を希望しない彼女としては、「親と同居するか否か」といった重大な問題を最初に聞いてしまえば、二度会う手間が省けると思っているのかもしれませんが、これでは「私は思いやりのない人間です」と相手にわざわざ宣言しているようなものです。また、たとえ同居する気がなくても、そう聞かれて「いいえ」と言う男性もいないでしょう。
私たちの会における「お見合い」では、基本的に会員さんがおっしゃっている条件をクリアした方をご紹介しています。そういう意味でも、ある程度条件にかなった人を、一度会っただけの短い時間で断ってしまうのはもったいないと思うのです。働いている女性はとても忙しいですから、なるべく短い時間に多くの人と会いたいという希望は分かるのですが、一人の人間を理解するにはある程度無駄なことも必要です。
女性は、必要以上に結婚を「人生の岐路」ととらえてしまいがちです。確かに結婚は大きな選択には違いないのですが、もう少し楽に考えればすぐに幸せになれるのになあ、と思うこともたびたびあります。肩の力を抜いてゆったりとした気持ちでお見合いにのぞめば、相手を質問攻めにすることなく、会話にゆとりが出てくると思います。
自分にぴったりくる人を探すためには、まず自分を知らなくてはなりません。自分がわがままなのに、相手もわがままな人を選んでしまっては、必ず衝突します。でも、相手が大らかな人であれば、自分のわがままも受け止めてくれるかもしれません。そうやって急ぐことなく、自分の長所と欠点、相手の長所と欠点をじっくり見据えたうえで、お互いの性格を補い合えるかどうかを見ていき、だめだと思えばそこで初めて断わっても遅くはないのです。三ケ月というのは、そのための期間だと思っています。
男性のほうが、前の結婚を引きずる人が多いせいか、再婚希望者のなかには、前の奥様の持ち物を、なかなか処分できない人もいます。結婚しようと思っている男性の家のあちこちに、前の奥さんの持ち物が残っているというのは、新しい家庭を築きたいと考えている女性にとって、あまり気持ちの良いものではないでしょう。
以前、若くして奥様を亡くし、私どもの会で再婚相手を見つけた男性がいました。その再婚相手の女性が、仲人さんのところにあいさつにいらした際にうかがった話です。
再婚して家に入ってみると、箪笥には亡くなった奥様の衣類や和服があり、しかもその家にはまだお墓がなかったためか、お骨が家に置いてあり、一瞬ギョッとしたそうです。仲人さんが「きっとやさしいご主人なのよ。お墓を買って納骨してあげたら、今度は奥さんが見守ってくださるわよ。衣類が残っていたのも、きっと男所帯でそこまで手がまわらなかったのよ」とアドバイスすると、「そうね、まだ貯金の額も聞いていなかったから、ついでに聞いて、お墓も買っちゃおう」と彼女もカラリと言い、その後の結婚生活は順調にいっているようです。でも、女性の立場に立って考えると、せめて衣類くらいは処分し、お骨についても再婚前に彼女に相談しておく、といった配慮があったほうがいいと思います。
奥様と死別した方とお見合いした女性からあがる不満として、亡くなった奥様の話をよく聞かされるということがあります。
お見合いを経て交際を始めたある女性が、男性の家を訪問したところ、花壇がきれいだったので、「きれいな花ですねえ」と言ったところ「死んだ女房が好きだったもので」と男性が答え、縁がこわれてしまったこともあります。また、亡くなった奥様の持ち物を「良かったら、それ持って帰ってもいいですよ」と言われて嫌だったという人。「死んだ女房の墓を大事にしてくれますか」と言われて、感情を害してしまった人もいます。
ある男性は、何回目かのデートの別れ際に「今日はちょっと寄るところがあるので」と言って、花屋さんに入りました。女性が見ていると、男性は菊など仏様に供えるような花を買ったので、いったいどこに行くのだろうと後をつけていくと、彼が入っていった先はお墓だったそうです。あとで聞いてみると、亡くなった奥様の月命日には必ずお墓参りをしていて、彼女とデートする日がたまたまその日に当たってしまったということでした。そうやって毎月お墓参りに行くというのは、とてもやさしい人だからだと思うのですが、彼女はどうしてもそれを受け入れることができず、結局、結婚には至りませんでした。
亡くなってしまった方にやきもちを妬いても仕方ありません。これから二人で想い出を作っていけば、亡くなった方の面影は放っておいても、姿を消していくはずです。
でも、男性のほうも、女性が抱いている新しい結婚生活への夢を尊重する必要があります。そのあたりの女性の心情を男性が察してあげることも、再婚を成功させるコツだと思います。
会員希望者を登録する際には、相手に求める条件をお聞きし、良縁ニュースに掲載しています。そのときに、「タバコを吸わない方」とか、「仕事を続けたいので、ご理解いただける方」というのはとてもわかりやすい具体的な条件なのですが、中には「包容力のある方」とか、「穏やかな性格の方」といった性格について条件をつける方もいらっしゃいます。
ところが、性格というのは、相手によってその評価はさまざまで、たとえば私たちが「物静かな方」と表現した方が、違う人から見ると「暗い人」と評価されるかもしれません。ですから、お相手を選ぶ際にその方の性格について聞かれたときには、正直に「分からない」と答えています。人によって見方が違うのですから、こればかりは自分で会ってみて、実際にどう判断するかにかかっていると言えます。ですからもしもあなたが相手の性格を重視するのであれば、条件の欄には「人物本位」と書き入れるのが、いちばん良いと思います。
条件のところに「できれば~」といった表現を使うのも考えものです。よく「できれば医師の方」と書く人もいますが、これは一見一歩引いた言い方のように見えて、そうではありません。むしろ「医師を希望」と書いたほうが、何を求めているのかはっきりしていていいと思います。
以前、趣味の欄に「落書き」と書いた女性がいました。たぶん、紙に絵を描くのが癖のようになっている人で、ちょっとお茶目な感じを出したいというところから書いたのだと思いますが、保守的な人は、「落書き」という言葉に悪いイメージを持っています。むしろ「イラスト」にしたほうがいいとアドバイスしたのですが、こういったセンスの違いはなかなかむずかしいものがあります。往々にして女性のほうがユーモアのセンスがあるのですが、男性にはそのユーモアを受け取れる人が少ないというのも事実です。
良縁ニュースには写真を掲載していますが、時々「写真は掲載したくないので、入れないでください」とおっしゃる方もいます。「外見だけで選んでほしくない」といった気持ちはよく分かるのですが、結果的にいえば、写真なしの方で、これまでお見合いの申し込みがあった例はたいへん少ないのです。ですから、入会して三カ月くらいたったころに説得し、写真を掲載していただくようにしています。
よく「三十年以上の歴史のなかで、変化はありましたか」といった質問を受けますが、入会されてから、条件を出していただき、紹介からお見合い、ご成婚といった流れはまったく変わっていません。けれども、ライフスタイルの変化によって会員さんが相手に求める条件は少しずつ変化しています。
たとえば、男女の年齢差は、昔は男性が三歳くらい上というのが常識でしたが、今は十歳以上離れた男性を希望なさる女性もいれば、「年下でも可」という女性までさまざまです。年下でもいいと、堂々と条件にあげるようになったのは、小柳ルミ子さんなどの芸能人が年下の男性と結婚し始めたころからでしょうか。また、皇太子殿下の結婚を機に、身長にこだわる女性も少なくなったような気がします。
一方、昔は年上の女性などとんでもないといった雰囲気だった男性のなかにも、「年上の女性のほうが面倒見がよくていい」という人が、若干出てきています。年下を希望する女性にしろ、年上でも良いという男性にしろ、以前は「こう言うと恥ずかしいかな」という思いから、遠回しに遠慮した言い方で表現していたものですが、今はストレートにはっきりと何でも言える時代になっていると思います。こうした傾向は結婚生活にも反映されていて、昔はご主人にゴミを捨てさせるなんてみっともなくて恥ずかしいといった風潮でしたが、今や、ゴミ捨てはご主人の仕事という家庭は結構多いのではないでしょうか。
年齢や身長だけでなく、職業についてもそれは同じです。以前は女性は学校を卒業すると、とりあえず花嫁修業をするというのが一般的でしたが、花嫁修行という言葉そのものがすでに死語に等しくなっています。男性が求める女性も、昔は専業主婦で家のなかにいてほしいという人が多かったのですが、今は共働き希望者がけっこうたくさんいます。とりあえずいっしょに働いて、豊かな生活をおくりたいという人たちが増えているのだと思います。
ただし、不況から職場をめぐる状況もかなり厳しくなっていて、出産したあと職場復帰できる女性は限られているようです。そうしたことから、共働き希望者の男性は、求める相手の女性に教師などの公務員を希望する方が多いですね。けれども一方で、女性は結婚に対して経済的には男性に依存するという傾向にありますから、男性が女性のお財布を期待しすぎると、しっぺ返しをくらうかもしれません。
最近は、女性のレベルがたいへん高くなりました。共学の大学でも女性が占める率が高くなり、なおかつ女子大もありますから、大卒の女性の数はとても多いのです。また、女性の身長も高くなっていますから、なかなか女性が望む男性に出会えないというのも理解できます。
独身時代、かなり高いお給料をもらっていた女性がいました。そのお嬢さんは東大を卒業したエリートと結婚し、それと同時に仕事もやめて家庭に入りました。その男性もかなり高給を得ていた人だったのですが、彼の生活費だけでは独身時代のような華やかな生活をおくるわけにいきません。結局彼女は離婚してしまったのですが、離婚したからといって、もとの就職先に戻ることもできず、仕方なく違う仕事につくことになりました。でも、以前ほどの高給を得るには至っていません。結婚によっていったん仕事をやめてしまった女性が、再就職先を見つけ、生活レベルを結婚前まで回復させるのはたいへんなことなのです。
今の日本の社会では、結婚によって生活が大きく変わるのは、まだまだ女性のほうです。女性は結婚する男性によって、極端な話、食卓にのぼる食材がステーキから挽肉になることもあるのです。ですから、私はある意味では、現在の状況で女性が相手に高望みをするのは当然だと思っています。